朝ドラ「カーネーション」糸子の舞台 古き良き時代
松坂屋大阪本店時代のショーウインドー
(J・フロントリテイリング提供)
御堂筋が拡幅されるまで、大阪市のメーンストリートとして栄えた堺筋。
その堺筋の日本橋3丁目交差点南東に、
白亜の重厚感ある「高島屋東別館」の建物がそびえ立つ。
戦前・戦後は“伝説の百貨店”と呼ばれた「松坂屋大阪店」の建物で
大勢の買い物客でにぎわった。
実はこの建物、NHK連続テレビ小説「カーネーション」で、
ヒロインの糸子が飛び込み営業するシーンに登場した。
糸子を魅了した、その華やかな舞台を探索してみた。
「カーネーション」は世界的なファッションデザイナー、
コシノ3姉妹の母、小篠綾子さんの生涯を描いた。
「高島屋東別館」の建物は、百貨店の女性店員が着物姿だった時代、
綾子さんをモデルにしたヒロイン、小原糸子が自作の制服を
飛び込みセールするシーンなどで登場。
異国情緒が漂う建物と、和服姿の女性たちというアンバランスが、
大正ロマンをかきたてる舞台装置として効果を発揮した。
正面からこの建物を見ると、
「テラコッタ」と呼ぶ装飾用の素焼き陶器を張り巡らせた豪華な外観に目を奪われる。
11個の大アーチを支える柱には、アカンサスの葉などアール・デコ様式の
幾何学模様がちりばめられている。
堺筋に面した1階部分は、ガレリア(回廊)と呼ぶアーケードを
約70メートルも整備している。
きめ細かな装飾のショーウインドーに目を向けると、
まるでパリのシャンゼリゼ通りのような、
しゃれた商店街を歩いている気持ちになれる。
また、床面のモザイクタイルは水色や黄色、赤色などカラフルな幾何学模様で、
異国情緒が漂う。
館内に足を踏み入れると、大理石をふんだんに使った壁面や大階段に圧倒される。
天井の配管はむき出しになっているが、整然としたたたずまいだ。
エレベーター上部に設置された階数表示はデジタルではなく、
時計のように針で示され、その針も、とがったアカンサスの葉という凝りようだ。
屋上に上ってみると、大阪の百貨店では当時初めてだったという、
松坂屋時代に使われていたプール跡も残る。
堺筋にはかつて、三越や白木屋、高島屋などの百貨店が立ち並び、
「百貨店通り」として名をはせた。
ちょうど400年前の1611(慶長16)年に名古屋で創業した松坂屋が、
激戦区の大阪で優位に立つため、
巨費を投じて昭和9〜12年にかけて段階的に増築した。
名古屋を代表する近代建築家の鈴木禎次氏が設計した豪華な
ルネサンス様式の7階建てで、店舗面積は約4万3千平方メートルと、
当時は「東洋一の大百貨店」と評判になり、
連日、大勢の来店客でごった返したという。
しかし、松坂屋大阪店はターミナルデパートを目指し、
41年京阪電気鉄道の天満橋駅へ移転。
残った建物を43年に高島屋が入手した。 この建物を訪れたら、ぜひ見ておきたいのが3階の高島屋史料館だ。
入場無料で、同社の歴史をパネルや歴代社長の写真などで紹介している。
商取引を通じて入手した珍しい美術品などを展示しており、一日20〜40人が訪れるそうだ。
とくに、奈良・法隆寺所蔵の国宝「玉虫厨子(たまむしのずし)」の
レプリカ(35年製)は一見の価値あり。
全国から集められた五千数百匹の美しい玉虫の羽を装飾に使うなど国宝を忠実に再現。
本物は玉虫の羽がほとんどなくなっているため、同史料館を訪れる学者や学生も多い。